Cross-Spot Analysis · Series 4

ES深度別 全スポット横断サマリー
40BB → 20BB のスタック変化が戦略をどう変えるか

14スポット × 5 ES 深度(40/35/30/25/20BB)の CB / Donk / Stab 頻度をすべて一覧化。
スタック深度が変わったとき、どのスポットで何が変わり、何が変わらないかを横断的に理解する。

目次

  1. ES深度とサイズ体系の変化 — 3つのレジーム
  2. 全スポット横断テーブル
  3. 5つのパターン — スポット種別ごとの反応
  4. Large bet の盛衰 — 30BB で何が起きているか
  5. 3BP vs SRP — スタック深度への逆応答
  6. 実戦ガイドライン

1ES深度とサイズ体系の変化 — 3つのレジーム

すべての議論の出発点として、ES 深度によってフロップのサイズ体系がどう変わるかを確認する。GTO Wizard は各 ES 深度で利用可能なベットサイズを動的に決定しており、SRP スポットでは次の3つのレジームが観察された。

40BB レジーム A
Small + Large 25%P + 75〜85%P
35BB レジーム A
Small + Large 25%P + 70〜80%P
30BB レジーム A
Small + Large 25%P + 60〜70%P
25BB レジーム B
Mid のみ 55〜65%P(Allin ≈0.3%)
20BB レジーム C
Mid + Allin 50〜55%P(Allin avg 1%↑)

※ 3BP スポットは SPR が元々低いため、全 ES 深度で「単一ベット+Allin」の体系のまま。上記の遷移は SRP スポットにのみ発生する。

3つのレジームと CB 頻度の特徴
レジーム A(40〜30BB):SRP 6スポット平均 CB 67〜69%。40→35→30 の変動は ±3pp 以内で横ばい。30BB は CB 頻度ではレジーム A の一員だが、内部では Large がこのレジームのピークに達する。Allin は技術的に存在するが SRP での実使用は 0.01% 未満(実質ゼロ)。

レジーム B(25BB):Small が消え Mid 単一体系へ。SRP 平均 49%(−20pp の急落)。IP vs Blind が特に大きく下落(−24〜29pp)。

レジーム C(20BB):Allin が avg 0.5〜1.5%、特定ボードで最大 35% まで拡大し、Mid + Allin の本格2サイズに。SRP 平均 52%(25BB から +3pp の小回復)

2全スポット横断テーブル

14スポット × 5 ES 深度の CB(または Donk / Stab)頻度を一覧化した。各セルの数値は全ボード平均の頻度(%)。「−」は未取得データ。

背景色:80%以上 60〜79% 40〜59% 20〜39% 20%未満

スポット ←─── レジーム A(Small + Large) ───→ レジーム B
Mid のみ
レジーム C
Mid + Allin
(CB / Donk / Stab 頻度 %) 40BB 35BB 30BB 25BB 20BB
▌ SRP — IP からの CB(レイザーが IP、ブラインドが OOP コーラー)
LJ-BB CB IP86.886.887.465.268.3
BTN-BB CB IP82.684.684.458.660.9
LJ-SB CB IP67.668.571.050.451.8
BTN-SB CB IP50.852.655.840.846.9
▌ SRP — OOP からの CB(レイザーが OOP、BTN が IP コーラー)
LJ-BTN CB OOP53.654.647.736.641.3
▌ SRP — Stab(OOP プリフロップアグレッサーがチェック後、IP がベット)
LJ-BTN Stab IP bets46.248.549.535.438.7
▌ SRP — Donk(BB または SB がフロップでリードベット)
BB Donk vs BTN Donk 3.5 3.1 3.6 2.5 3.1
BB Donk vs LJ Donk 4.5 4.6 4.6 2.4 2.6
SB Donk vs BTN Donk 20.1 16.7 18.8 21.6 23.3
SB Donk vs LJ Donk 7.6 7.6 7.7 5.4 9.6
▌ 3-Bet Pot — CB / Donk / Stab
BTN 3BP CB vs LJ 3BP・IP 61.2 64.7 65.8 66.6
LJ Donk in 3BP vs BTN Donk 7.0 6.6 5.9 6.7
SB 3BP CB vs LJ 3BP・OOP 63.7 67.3 70.2 73.9 76.8
LJ Stab in 3BP vs SB IP bets 32.3 33.2 31.7 30.7 31.9
読み方のポイント
赤(20%未満)は Donk など構造的に低いスポット。急激な赤化(緑から赤への変化)が 25BB の転換を示す。3BP スポットは逆に緑化(増加傾向)。

35つのパターン — スポット種別ごとの反応

14スポットを ES 深度への反応パターンで分類すると、5つのパターンに整理される。

パターン A:SRP IP(vs Blind) — 高安定→25BB急落

LJ-BB CB、BTN-BB CB、LJ-SB CB、BTN-SB CB
レイザーが IP(ブラインドが OOP コーラー)の4スポット。40〜30BB は 53〜87% で安定。25BB で一様に急落(−9〜−29pp)。

理由:Small が消え Mid のみになると fold equity が低下。特に BB が相手の LJ-BB / BTN-BB は下落幅が最大(−24〜29pp)。

パターン B:SRP OOP(vs BTN) — 中程度安定→25BB急落

LJ-BTN CB のみ
SRP でレイザーが OOP になるのは BTN がコールドコーラーになる LJ-BTN のみ。40〜30BB は 58〜60% で横ばい。30BB で Large がピーク。25BB で 46% に急落(−12pp)。

理由:BTN という強いコールドコーラー相手でそもそも CB に慎重。25BB の Mid 移行でさらに fold equity が低下。

パターン C:3BP — 単調増加(SRP と逆)

SB 3BP CB vs LJ、BTN 3BP CB vs LJ
40BB から 20BB にかけて CB 頻度が単調増加。SB 3BP CB: 63.7% → 76.8%(+13pp)。

理由:SPR が 40BB 時点でも ≈2.5 と低く、スタックが短くなるほど ベット=コミット に近づき、「強いなら今すぐ入れる」論理が強まる。Allin 頻度も単調増加(1% → 10%)。

パターン D:BB Donk — 超低安定

BB Donk vs BTN、BB Donk vs LJ
全 ES 深度で 2〜5% の極めて低い水準で安定。25BB でわずかに低下(約 −2pp)するが構造的変化はない。

理由:BB のレンジ劣位はスタック深度に関わらず一定。ドンクのインセンティブは構造的に乏しい。

パターン E:SB Donk vs BTN — 中程度安定

SB Donk vs BTN
16〜23% と他の Donk スポットより高く、ES 深度への感応も小さい。

理由:SB は BB と異なり BTN の 3-bet 前にアクション。BTN がコールドコーラーで SB の一部ハンドがレンジ優位を持てるため、Donk の機会が拡大する。

最重要パターン:SRP vs 3BP の逆方向性

SRP スポットは 25BB を境に CB 頻度が急減するのに対し、3BP スポットは 25BB でも CB が増加し続ける。これは「スタックが短くなるほど CB しにくくなる」という直感的理解が SRP にしか当てはまらないことを示している。3BP では「そもそも SPR が低い」ため、短スタック化は有利な状況の加速として機能する。

4Large bet の盛衰 — 30BB で何が起きているか

サイズ体系の変化を理解するもう一つの鍵は、Large bet(≈75〜85%pot)の頻度トレンドだ。全体 CB 頻度が比較的安定しているように見える 40〜30BB の間で、内部構成が大きく変化している。

スポット40BB Large%35BB Large%30BB Large%25BB Large%傾向
LJ-BTN CB(OOP)24.1%30.0%32.9%0%(消滅)↑ → 消滅
BTN-SB CB(IP)22.9%23.5%22.9%0%(消滅)→ → 消滅
LJ-SB CB(IP)21.0%21.7%24.4%0%(消滅)↑ → 消滅
BTN-BB CB(IP)15.4%16.5%17.3%0%(消滅)↑ → 消滅
LJ-BB CB(IP)26.2%25.2%26.1%0%(消滅)→ → 消滅
LJ-BTN Stab15.1%13.9%12.8%0%(消滅)↓ → 消滅
BB Donk vs BTN0.5%0.4%0.5%0%(消滅)微量 → 消滅
BB Donk vs LJ0.8%0.6%0.4%0%(消滅)↓ → 消滅

全 SRP スポットで Large が 25BB に消滅する。一方で 3BP スポットは全 ES 深度で Single-bet(40〜50%pot 相当)のみであり、そもそも Large / Small の区別が存在しない。

30BB での Large 増加はなぜ重要か

LJ-BTN CB では 40BB(24%)→ 35BB(30%)→ 30BB(33%)と Large が増加し続ける。これは SPR 低下とともに「強いが脆弱なハンド(AA/KK on wet boards)」が即時最大化を選ぶためだ。30BB では Large CB が全 CB の半分以上を占めるボードカテゴリが増える(特に T/J/Q 高、Connected Rainbow)。

実戦への示唆
30BB では Large の存在感が最大化する。このスタック深度でフロップ CB のサイズを「なんとなく Small」と決め打ちしていると大きな EV ロスが生じる可能性がある。ボードテクスチャを確認し、TJ9・Connected など Large が有力なボードでは意識的に Large を選ぶべき。

「Allin を Large の延長」と捉えると何が見えるか

25BB で Large が消滅し 20BB で Allin が登場するなら、「大きいほうのベット」= Large + Allin の合算として見てみると、より本質的なトレンドが浮かぶ。

スポット30BB
Large+Allin
25BB
Large+Allin
20BB
Large+Allin
30BB→25BB
LJ-BTN CB(OOP)32.9%0.4%1.5%−32.5pp
LJ-BB CB(IP)26.1%0.2%0.8%−25.9pp
BTN-SB CB(IP)23.1%0.5%1.0%−22.6pp
LJ-SB CB(IP)24.5%0.1%0.5%−24.4pp
BTN-BB CB(IP)17.3%0.2%0.8%−17.1pp
LJ-BTN Stab12.9%0.0%0.1%−12.9pp

合算で見ると、25BB での崩壊がより鮮明になる。30BB に存在した「大きいベット」のほぼ全量(12〜33%)が、25BB で 0.0〜0.5% まで消滅している。20BB の Allin 登場による回復は最大でも 1.5%(LJ-BTN CB)と微量で、30BB 水準には程遠い。

見え方が変わる点
「Large が消えて Allin が代わりに出てくる」という連続的な移行ではなく、「大きいベット」という選択肢が 25BB でほぼ機能停止し、20BB でも本質的には回復していないという断絶として捉えるほうが正確だ。レジーム B(25BB)と C(20BB)における戦略の主軸はどちらも Mid ベットであり、Allin は一部の特殊ボードでのみ出現する補助的な選択肢にとどまる。

53BP vs SRP — スタック深度への逆応答

この対比は本データセットで最も重要な発見の一つだ。SRP と 3BP でスタック深度への反応が正反対になる。

SRP IP CB(LJ-BB): 高安定→急落

40BB:87.2%
35BB:87.1%
30BB:87.4%↓↓
25BB:62.5%(−25pp)
20BB:65.6%(+3pp)

3BP OOP CB(SB-LJ): 単調増加

40BB:63.7%
35BB:67.3%(+4pp)
30BB:70.2%(+3pp)
25BB:73.9%(+4pp)
20BB:76.8%(+3pp)

なぜ逆方向になるか

項目SRP3BP
フロップ前の SPR(40BB)≈ 6〜7≈ 2.5
25BB での SPR≈ 4≈ 1.5
Short stack で起きることSmall が消え fold equity 低下 → CB 減少Allin が現実的な範囲に → CB = 即コミット 増加
25BB→20BB の変化やや回復(Mid+Allin で適応)さらに増加(Allin 比率上昇)
MTT 実戦への適用
バブル付近(Near Bubble)で 25BB 以下になった場合、SRP では「チェックが増える」と認識する。一方 3BP に入ったら「CB はより積極的に」と反対に切り替える。この二重性を直感的に理解できれば、スタック深度変化への適応力が大幅に上がる。

6実戦ガイドライン

5つのパターンと逆方向性の発見を、実戦で使えるガイドラインに圧縮する。

状況 レジーム A(40〜30BB) レジーム B(25BB) レジーム C(20BB)
SRP IP CB
(LJ-BB, BTN-BB,
LJ-SB, BTN-SB)
Small + Large。53〜87%(BB 相手が高く SB 相手がやや低め)。30BB でも横ばい。 Mid のみ。41〜63% に急落。BB 相手(−24〜29pp)が SB 相手(−9〜22pp)より下落幅大。 Mid + Allin。+3〜6pp 小幅回復。Allin が特定ボードで有力に。
SRP OOP CB
(LJ-BTN のみ)
Small + Large 混合。58〜60%。30BB で Large 頻度がピーク。ボード選択が重要。 Mid のみ。46%(−12pp)。Dry Rainbow でのみ積極的。 Mid + Allin。49%(+3pp)。一部ボードで Allin が主力になる。
3BP CB
(BTN 3BP, SB 3BP)
単一 Bet + Allin。61〜68%。SRP と異なり Allin は 1〜3% で有意に存在。 同構造のまま増加。66〜74%。レジーム A より積極的。 さらに増加。SB 3BP CB: 77%。Allin 比率も上昇(≈10%)。
Donk(BB/SB) BB Donk: 2〜5%、SB Donk vs BTN のみ ≈20%。基本はチェック。 ほぼ同水準。BB Donk はやや低下(−2pp)。SB Donk vs BTN は維持。 ほぼ同水準。構造変化なし。
Large サイズ選択 30BB で Large が最大化(例: LJ-BTN CB 24%→33%)。T/J/Q-high Dry で Large 優先。 Large は全 SRP スポットで消滅。Mid 単一のみ。 Large は消滅のまま。ただし Allin が Large の代替として機能し始める。

このシリーズの次のステップ

このサマリーが示す通り、スポットごとの戦略は ES 深度で大きく変わる。次号以降では各スポットを個別に深掘りし、ボードカテゴリ別の詳細と「なぜそうなるか」のレンジ動態を解説する。

推奨読了順:本記事(ES Overview)→ LJ-BTN SRP CB 詳細 → LJ-BB SRP CB 詳細 → BTN-BB SRP CB 詳細 → 3BP スポット詳細


データ:GTO Wizard(MTTGeneral_ICM9m200PTPCT50)全14スポット / ES 40・35・30・25・20BB / 各99ボード。
スクレイパー PR #23 修正版使用(マルチサイズ完全捕捉済み)。2026年5月取得。